随分と久しぶりの更新になってしまいました。
最近アプリ開発をしているのですが、開発よりも大きな範囲で意見を求められることが多いので、参考となればと思ってまとめてみました。
自分の考えたサービス企画が無事に社内で承認を得た。さぁ開発会社に見積り取って発注するぞ!そんな状況の人にぜひ目を通して欲しい10の情報をまとめました。
依頼する前にあなたが考えること
1.アプリをリリースして1年間のストーリーを書く
開発会社によってはあなたの企画したサービスに対して親身に相談に乗ってくれるかもしれませんが、残念ながら開発会社の本業はアプリの開発なので、過度な期待はやめましょう。
一方、あなた自身もいきなりサービス全体を完璧に想像できないでしょう。そこで開発会社とサービスのイメージを共有するためにも、リリース後1年間のストーリーを描きましょう。
いきなり「ストーリーを書け」と言われても難しいと思うので、「ユーザー数」と「売上」をA4で1枚程度で表現するだけでだいじょうぶです。
- 企画したサービスの内容を「メイン・サービス」と「サブ・サービス」に分け、優先順位をつけましょう。
- 横軸を時間軸とし、「メイン・サービス」に対して「サブ・サービス」をいつ加えていくのか、優先順位を元に拡張タイミングをざっくり決めましょう。
- ユーザー数と売上の理想値と目標値を記しましょう。
- 見た目が悪くても別によいです。「なんとなく」でも書くことが大切です。どうせ後から変更します。
↑イメージ。中身はもちろん適当です。
2.類似サービスを簡単に調べる
あなたが企画したサービスには、先行するサービスや類似するサービスがあるはずです。好敵手(ライバル)となるサービスを3つほど設定し、それらのサービスについて数値情報を集めましょう。
- ユーザー数
- 売上高
- サービス運営期間
- 運営人数
- 運営形態
気をつけるべきは、細かい情報まで追わないことです。月間アクティブユーザー、課金割合、アプリの起動時間など、それら見るだけで楽しい情報はあなたの時間を無駄に奪います。公表されているユーザー数と売上高、サービスを運営期間だけで十分です。
それよりもがんばって集めるべきはサービスの運営側の情報です。同じサービスがどの程度の人数で運営されているのか、運営は外部の会社に委託しているのか、といった運営情報は、どのような規模の開発を行うべきかを考える際に非常な重要になります。
調べた情報は1と同じ資料にざっくり記入し、自分の書いたストーリーと比較しましょう。自分のストーリーが明らかにライバルサービスの現状から逸脱していた場合は、この時点で数字を変更しておきましょう。
↑イメージ。こちらの中身も適当です。
3.予算を意識する
あなたがサービスに対して会社が投入できる予算を把握できているのならばラッキーです。「開発予算」だけが上司から伝えられているかもしれませんし、もしかするとお金の話は何も伝えられてないかもしれません。
あなたが予算についてどの程度の情報を持っていようとも、サービス全体に必要な予算については自分なりの意見を持てるようにしましょう。何人を雇う予定なのか、委託するならば月々に幾らまで支払えるなのか、自分の書いたストーリーを見ながら漠然と数字を考えましょう。
またそこで考えた予算については、必ず社内で意見交換をしましょう。「開発費用だと思っていた金額に広告費も含まれていた」「開発予算が少なく受注会社が決まらなかったが運営費用は潤沢に用意されていた」など見受けられます。そのサービスにどの程度投資するのか、予め社内で最初に決めておきましょう。
開発に渡す情報の整理
4.リリースまでのスケジュールを4段階で想定する
開発会社に依頼すれば、自動的にアプリがリリースできるわけではありません。リリースまでのスケジュールを、大きく4つ段階に分けて把握しましょう。それぞれ段階であなたと開発者のやることを予め想定しておくと、お互いの作業効率が上がります。これも、A4で1枚の紙に書いてみましょう。
- 1.協働企画期間(両者のイメージを固める期間)
社内で通った企画を開発会社と共有し、どんな形にするのか一緒に考える期間。 - 2.仕様決定期間(本格的に仕様を決めていく期間)
固めたコンセプトを元に、実際にどのようなシステムにするのか決めていく期間。 - 3.作業期間
決定した仕様を前提に開発作業に集中する期間。リリースに向けて必要な情報を集める期間。 - 4.修正期間
余程のことがない限り、あなたは一度完成したアプリを見ても修正指示を出したくなるものです。あなたの方で予め修正のための期間を想定しておきましょう。重大なミスがあった時に対応する猶予期間にもなります。
5.あなたの会社について調べる
あなたの会社が大きな会社の場合、あなたの知らないルールが多く存在する可能性があります。「特定のサーバ会社を利用する」「サービスの売上げは指定されたフォーマットに記入する」「アカウントの管理は全て自社の人材で行う」といった社内ルールがきっとあるはずです。
その情報を知らずに開発を進めてしまうと後戻りできずに致命傷になることがあります。あなたの会社で行われていることが、開発会社に取っては想定外のことがあるのです。特に社内の部署が多岐にわたっている場合は、予め各部署の担当者と話ができるようにしておきましょう。
6.参考資料を用意する
良いアプリを作りたいと思ったならば、自分が使った中でよかったアプリを開発会社に伝えましょう。類似サービスでなくても構いません。アプリの名前とどんな点が気に入ったをリストにして渡すだけでも、グッとイメージの共有が早くなります。
7.何を発注するのか明確にする
仕事を進めていくうちに開発会社との間に溝を感じることがあるかもしれません。そんな場合は、あなたが開発会社に期待している内容と、開発会社が請け負っていると捉えている仕事内容が乖離していると思って間違いないでしょう。
サービスに対してアプリを開発する場合、「アプリ開発だけ」を依頼するのと「サービス運用を見据えたアプリ開発」を依頼するのでは、開発会社の考え方は大きく異なります。決まった仕様に向かって作業をするのと仕様を決める作業は全然異なる仕事です。
また掲載するコンテンツにも同じことが言えます。「かわいいイラストをつけて欲しい」「いい感じで音をつけて欲しい」「商品を宣伝する動画も入れて欲しい」といった要望をあなたが持っていても、多くのアプリ開発会社はそれらのコンテンツを作れないでしょう。殆どの場合、アプリ開発はコンテンツの入れ物を作る仕事でしかありません。
如何にして、あなたと開発会社の間のイメージを共有するのかが大切です。次の記事を参考にどうぞ。
顧客が本当に必要だったものとは (コキャクガホントウニヒツヨウダッタモノとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
心構え
8.「クリエイティブ」は忘れよう
web上の読物ではクリエイティブなアプリ制作現場をよく目にしますが、現実はそんなに甘くありません。「あの人に頼めば素晴らしいUIデザインを考えてくれるだろう」「あの会社に企画書を渡せば、こちらの思い通りに作ってくれるだろう」。webからはそういった甘い想像が掻き立てられますが、一旦忘れましょう。
9.「アジャイル」は忘れよう
また、「アジャイル」という開発手法が世の中にはありますが、意思決定が迅速に行える環境があって初めて利用できる手法です。あなたが他社に開発を依頼するのであるならば、クリエイティブと一緒にこちらも忘れましょう。
10.自分が一番サービスに詳しい人になろう
「サービスを企画したのは自分だが、開発に入ってからはどんな状況か分からない」ということを良く聞きます。人間は会議で打合せた情報が自分の頭の中にしっかりと入っていると思いがちですが、実際にはスカスカです。それが積み重なると、あなたと開発会社の間のサービスへのイメージが乖離していきます。
それを防ぐためにも、資料はできる限り自分の手で作成しましょう。もちろん、自分では書けない開発の情報も出てくると思いますが、その時になってから開発会社に資料提供をお願いすればよいのです。それよりも自分では書けない情報が何かをしっかりと把握することが大切です。
常に自分が資料を作ることで、サービス全体を見渡した時に一番詳しい人になれます。そうすれば、みんなが誰に指示を仰げばよいのか明確になり、現場がうまく回るようになります。
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