最近、日本でUber社が提供するデリバリーフードサービス「UberEATS」がリリースされたようで、ネット上では様々な感想や意見が散見されます。
サービス設計は難しく、念には念を入れて設計したつもりでも現場では問題が多発するわけですが、今回もサービス設計時に参考になりそうな意見が幾つかみられました。
UberEATSの配達員をやってみたら、長文になった : akiyan.com
大きいものから小さいものまでざっと書き出すとこんな感じ↓
- 配達された商品の向きが悪く、ドレッシングがこぼれている(配達員のスキルの問題)
- 注文と異なった商品が届く(店舗と配達員の間の受取オペレーションの問題)
- 店舗側の稼働状況によって、頼んだ注文が1時間後にキャンセルされる(注文システムと店舗の情報連携の問題)
- 配達先の住所が表示と異なり配達できない(アプリケーションの問題)
- オリジナルの紙袋ではなく白いビニール袋で届いた(オペレーションの問題、紙袋の在庫が切れた?)
- 扉を配達員が押さえるなど、細かい部分でのサービスの質(配達員の教育の問題)
- 店舗のブランディング(UberEATSと店舗の関係の問題)
- 配達員に住所を知られてもだいじょうぶか、というセキュリティ(配達員の管理の問題)
- 配達員が撮影する写真(配達員の教育の問題)
- アレルギー表示(UberEATSと店舗の情報連携の問題)
- セットなの?単品なの?メニューの内容(UberEATSと店舗の情報連携の問題)
- 日本語対応(運営側の情報提供の問題)
- 配達員の保険(配達員の労働環境の問題)
- 店舗で受取を待っている配達員の姿(店舗のイメージの問題)
問題があることは必ずしも悪いことじゃない
もちろん、上記のような問題があるからサービスをやめろ、という話ではなく、問題をしっかりとピックアップして、PDCAを回して改善していければよいかと思います。サービス設計者にとって大切なのは、問題のヒエラルキー(改善する順序)をしっかりと位置づけられるかですね。
・短期間で解決すべき問題⇔時間をかけて改善に取り組むべき問題
・運営会社側だけで改善できる問題⇔配達員や提携店舗での対応が求められる問題
・お金を掛ければ解決する問題⇔お金では解決できない問題
取り分け大きな問題
配達員や店舗が注意して解決できる問題はさておき、サービスとして運営会社が注意していかなければいけない大きな問題が2点ほどあるかと思います。
1:注文者と配達員のトラブル
使ってみて10分で届いたのは驚いたし便利!と思ったけど、その一方で「身元の分からない人が自分の家のドアの前までくる」ということを利用する上で一応念頭に入れておいても良いかもしれない。特に女性は。
他の配送系も同じでは?と思うかもしれないけれど、1日拘束があったり、社員として契約されるよりも、「空いた時間だけ参加すれば良い」というバイトほど参加が簡単なものはない。おかしな人が紛れこむ可能性は他よりも高い気がする。
また他の配送の場合は、何かあった時にはその会社に責任があると思うけれど、Uberの場合は「あくまで配送者とマッチングさせているだけ」なのだ。
灰色ハイジさんは「あくまで配送者とマッチングさせているだけ」と書いていますが、個人的には運営会社は配達員によって注文者が恐怖を感じることが無いように何かしらの対策をするべきだと考えます。注文者に対して配達員から何かしら被害が生じた時は、少なくとも窓口としてUberEATSが前面に立たないといけないでしょう。
例えば、集合住宅の共用部の備品を壊された、一度頼んだ配達者が自宅の前に頻繁に現れるようになった、など、注文者と配達員とトラブルは容易に想像ができます。こういった問題に関してUberEATSが専用の窓口を儲け、何かしらの解決を行う必要があるでしょう。
間違っても「お客様の方で問題を起こした配達員と直接交渉してください」とはやってはいけないのですが…どうなるのでしょうね。
2:配達員の保険の問題
@akiyan氏が書いていますが、配達員の保険についてもUberEATS側で何かしらのサポートを設けるべきだと思います。
UberEATSというサービスによって配達員が配達業務を行っているのですから、配達員の怪我への注意を促すことと、万一怪我をした場合の保証についてはUberEATS側で責任を負うべきでしょう。
この部分を配達者個人の責任とした場合、保険に入ることを忘れていた・怠けていた配達員は人生を棒に振る可能性があります。
お金を稼ぐ手段を提供するならば、もう一方で軽視されがちな保険や納税についても運営側はサポートをしていくべきだと思います。
上記の2点は、これまでの宅配業者にとっては配達社員に対する責任(教育や福利厚生など)の範囲で行われていることです。UberEATSは個人事業者とのマッチングサービスだから、という理由で、注文者と配達員のトラブルへや、配達員の人生への責任を取らないでよい、という理由にはならないでしょう。