UXデザインの「ユーザー」って誰?

UXデザインの「ユーザー」って誰だろう? 普通に考えれば、サービスの利用者のことだろう。

UXデザインはユーザがサービスの目的に共感して、…ポジティブな体験・満足を得られるようにユーザの感情・行動・態度をデザインすることです。

5分でわかるUIとUXの違い : Excite Designer's Blog

「ポジティブな体験・満足を得られるようにユーザの感情・行動・態度をデザインする」というのならば、最近話題になっているソシャゲのガチャ問題は「お金をたくさん使ったのに目的のアイテムが出ない!」という最悪なUXデザインと言うことができるはず。
ならば最悪なUXデザインとしてネットで評判になっているに違いない!と思って検索しても、UXデザインでガチャ問題を語っている記事が出てこない。ガチャ目当てに課金をするユーザーの体験はUXデザインの範囲外なのだろうか?

UXデザイナーは事業者に尻尾を振っているだけだよね

悪意のある書き方をすれば、webにあるUXデザインに関する記事の多くは事業者に対して「UXデザインは利益になりますよ」というメッセージを発しているだけだ。
もちろん彼らが主張するようにユーザーに利することが事業の利益と直結する部分は多分にある。しかし、UXデザインの本当の課題はユーザーに利することが事業コストを増大させてしまう場合に、どのような線引をデザインできるのか、ということだ。

この言葉の意味が分からない人は、例えば「サービスからの退会のデザイン」を考えて見れば良い。

thebridge.jp

上記の記事では「『改悪』で退会数を半分に減らした事例」としてグリーの退会ページが紹介されている。
記事の中で「間違ってもこのような間違いを『正しい』インターフェースに使ってはならないということだ。」と釘を刺してはいるが、退会を望むユーザーに対してデザインを利用して退会を防ごうとするその姿勢は、明らかにユーザーにとっての不利益だ。

ステルス・マーケティングやソシャゲのガチャ問題、Airbnbにおける近隣住民とのトラブルなど様々な問題が各所で起きている。法的に未整備の分野であるITをベースにしたサービスが社会に浸透していく過程なのだから、ある程度は問題が起こるのは仕方ないのかもしれない。
しかし、それらの問題に対してしっかりと解決に向き合う分野が必要だろう。UXデザイナーは、これらの問題は自分たちの分野で解決すべき問題だと思っていないのだろうか?

補足

さもUXデザイナーが悪いみたいな文章を書いたが、当然UXデザイナーの中にもこの問題を指摘している方はもちろんいる。
例えばこのエントリとか。

UXを損ねる最悪なグロースハック | lsd lab

僕は「グロースハッカー」と「UXデザイナー」は対になる職種だと思っていて、UXデザイナーはユーザーから見たプロダクトの品質を良くしようとする(売り上げや利益にも関知はするが、第一目標ではない)のに対して、グロースハックは数値を上げる事を目的にしていて、ユーザーが多少不利益を被ったとしても数値が上がれば構わないという部分がありそうです。

このエントリではUXデザイナーとグロースハッカーという対立軸を設定し、退会率を低下させる施策やレビューへの頻繁な誘導、ユーザーに広告だと分かりにくいPR記事など、グロースハッカーが主導する施策への批判が書かれている。
(個人的にはグロースハッカーという仮想敵を作るのではなく、ダメなUXとして批判してよかったのではないかと思う。)
いずれにせよ、このような批判が行える人が増えれば、UXデザインの社会評価も変わってくると思う。

蛇足

やっぱりこのような社会倫理とデザインの話は、UXデザイナーではなくインフォメーション・アーキテクト(IA)の肩書の人に求めるべきなのかもしれないね。