前回取り上げた「No Picking」運動ですが、ネット界隈のいろんな人が参入して盛り上がってますね。
出火元の境氏の記事。
NewsPicksと三上俊輔に抗議する〜私の記事はピックしないでほしい〜 | sakaiosamu.com境氏に同意した常見陽平氏の記事。
News PicksはNo Picking運動にどう向き合うのか?誹謗中傷プラットフォームの行方(常見陽平) - 個人 - Yahoo!ニュース常見氏が1年前に書いていた同様の内容の記事。
NEWS PICKSが嫌いになってしまった このサービスにネットでの議論なんて無理である : 陽平ドットコム〜試みの水平線〜境氏に名指しで取り上げられた三上氏の記事。
インターネット上に言論を公開する意味、境治氏からの抗議に応えて - 三上俊輔のブログ火中の栗拾いの名人、徳力氏の記事。
ネットで批判されるのが嫌ならネットで情報発信なんかやめた方が良い?(徳力基彦) - 個人 - Yahoo!ニュース徳力氏ウォッチャーとしての実力をいかんなく発揮した中川淳一郎氏の記事。
News Picksのコメントがむかつくのは、「理性があると思ったのに…」という期待があったから : おはよウサギ!
みんな楽しそうですね。
「嫌なら使うな」は正しいのか?
Twitterなども含めて境氏の指摘には「ネットで発言する以上は批判は必ずされるものだから批判されたくないという境さんの意見は甘えだ」という意見が散見される。彼らは類似のサービスであるはてなブックマークや2ちゃんねるなどを例に出し、昔からネットでは批判があるのだ、批判を拒絶するなら記事を書くな、という。
個人的に境さんの問題提起で気になるのは、結局境さんは、自分の記事が批判されたから、自分の記事を批判するようなサービスからはリンクするなと言っているようにしか聞こえないという点です。
(徳力氏の記事より抜粋)
しかし、個人的にこの意見は問題の根っこのところから的がはずれていると思う。
境氏の記事のタイトルが「NewsPicksと三上俊輔に抗議する〜私の記事はピックしないでほしい〜」となっているため誤解を生みやすくなってしまっているが、境氏が提言している対象はNewsPicksサービスの運営についてである。
実名か匿名かではなく、運営側がきちんとしたモデレーションをすることが必要なのだ。どういうコメントでどういう議論をするのが理想かを明示し、コミュニティをマネジメントするのだ。運営側が、意思を明確に打ち出すことが必要だ。また、人手もかけねばならない。
(境氏の記事より抜粋)
面白いことに上記で取り上げたほぼ全ての記事で、NewsPicksの運営の杜撰さが指摘されているんですよね。
実態と乖離したイメージ戦略
とはいえ、言論のプラットフォームを志向するサービスが、どうでもいい誹謗中傷コメントを放置しているというのはいかがなものか。最近では、大手出版社のスタッフが同サービスの編集部に移籍したこともニュースになっていた。しかし、東洋経済新報社で東洋経済オンラインを手がけた佐々木紀彦氏を始め、同サービスに関わる者たちは胸を張ってこれが「ジャーナリズム」だ、「プラットフォーム」だと言うことができるのだろうか。これは有力老舗メディア企業を辞めてまでやりたかったことなのだろうか。
(常見氏の記事より抜粋)
一方でNewspicksのサービス運営に関しては、YouTubeやはてブなどと同様に非表示機能を搭載することは取りうべき手段と考えます。特に今回のように著者が直接非表示を依頼するような事案に対しては運営として適切に対応可能なルールが必要だと考えます。
(三上氏の記事より抜粋)
「建設的な議論が展開されると思ったのに…」「批判は甘受するけど、単なる揶揄なんてないと思ったのに…」みたいな気持ちになってしまう。元々理性的な言論空間として期待をしていたのに、実際はそうなっていないところから、余計に腹が立つ。
(中川氏の記事より抜粋)
自分は最後の中川氏の指摘が最も同意できるのだけど、この問題は「webに記事を書くと批判されるから嫌だ」という個人の感情の話ではなく、NewsPicksが積み上げてきたブランドイメージとユーザーの利用実態がかけ離れているところに問題があるわけだ。
- 世界一の経済情報プラットフォームが目標
- 東洋経済オンラインの立ち上げに関わった佐々木紀彦氏が編集長
- News Picks 上で様々な経済ニュースをワンストップで閲覧する事が可能
- 著名人・専門家によるニュースの解説が読める
こういった謳い文句を並べてユーザーを惹きつけサービスを拡大した結果、利用実態が表に出てみたら謳い文句とは全然違うことになっていた、と。そりゃー、記事を勝手に取り上げられる外部の人からは文句でますよね、という話。
CtoCビジネスにおける事業者のあり方
(NewsPicksの梅田氏)仕組みとしては、1記事に1コメントしかできないようにしていて、コメントに対するアクションは「いいね!」しかできないようにしています。できるだけ炎上しない仕組みを心掛けました。
「ユーザー数は追いません」NewsPicksの広告収益に頼らないメディア運営とは? | somewrite (サムライト)より抜粋
上記のようにNewsPicks側も当然色々考えた結果として現状のサービスになっていると思うし、ここまで成長してきたのだからそれは成功したのだろう。しかしここからは前回の記事にも書いたように、ユーザー規模に合わせてサービス設計を見直しつつ運営を改善していく段階になったのだと思う。次はユーザーだけでなくサービス全体の生態系まで視野に入れてサービス設計をがんばって欲しい。
追記
記事を書いてたら境氏が新しい記事を投稿していた。
NewsPicksと三上俊輔への抗議、その後の顛末〜批判はありだが、侮辱はダメだ〜 | sakaiosamu.com
一部NewsPicksのサービス設計への指摘を抜粋。
NewsPicksは文字数が長い。1000字も入る。そして記事よりコメントのほうが存在感が大きい。はてブの逆だ。チャチャってなものではない。うやうやしく「コメント様」って感覚だ。これはそもそも、そういうツールをめざしたからだ。経済のストレートニュースやリポート記事をピックし、専門家がコメントする。記事の側は「情報」だから地位が低いはずだったのだ。記事を読むのではなくコメントを読むサービスなのだ。実際、記事を読まないままコメントだけ読んでおなかいっぱいになる、という意見をある人からもらった。
ところがユーザー数が増え、話題も広がった。本来はそこで、フォーマットの見直しが必要だったのだろう。だがそのまま走る。そうすると。コメント様が傍若無人になりかねない。何しろ、何を言ってもいいのだ。あんなにリスクのないコメント欄もないだろう。ただ、ユーザー数が増えたので、コメントを書いてもLIKEがつかないとすぐに下にもぐってしまい、誰もコメントを読んでくれない。LIKEをもらうには気の利いたことを言わないといけない。かくして、LIKE獲得競争がはじまった。
コメントの文字数、リアクションの種類、記事を見せる順番、コメントの全体数、ユーザー数、などサービスの印象や利用実態を決定づける設計のパラメータは無数にあるよね。