JOGAがガイドラインを改訂したらしいけど…これでソシャゲ市場は健全になるのか?(反語)

早速だが、4gamerさんの記事から引用させて頂く。

改訂版「JOGAガイドライン」の解説セミナーが開催。有料ガチャの表示や設定,運用に関する項目をオンラインゲーム事業者にレクチャー - 4Gamer.net

日本オンラインゲーム協会(JOGA)とモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)は本日(2016年4月15日),「JOGAガイドライン解説セミナー」を東京都内で開催した。このセミナーでは,1月28日に改訂され,4月1日より施行された「オンラインゲームの運営に関するガイドライン」について,改訂した部分や重要な部分の解説がなされた。

主に「安心安全宣言」(pdf)と「ガチャガイドライン」(pdf)の2つに焦点を絞って改訂されたが、ガチャガイドライに抜け穴が空いておりいろいろと問題になっているようだ。

ガイドラインで最も注目されるのは、いわゆる「レアアイテムは特定の金額をユーザーが支払った場合に必ず提供しなさい」、という次の部分だと思う。

  1. 有料ガチャの設定に関する事項 (1)有料ガチャにおいてガチャレアアイテムを提供する場合、以下のいずれかを遵守するものとする。
    □ a. いずれかのガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額(その設定された提供割合から期待値として算定され る金額をいう)の上限は、有料ガチャ1回あたりの課金額の 100 倍以内とし、当該上限を超える場合、ガチ ャページにその推定金額または倍率を表示する。
    □ b. いずれかのガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額の上限は 50,000 円以内とし、当該上限を超える 場合、ガチャページにその推定金額を表示する。
    □ c. ガチャレアアイテムの提供割合の上限と下限を表示する。
    □ d. ガチャアイテムの種別毎に、その提供割合を表示する。

ガチャガイドラインより抜粋

これでユーザーは最大50000円を支払えば必ず目的のアイテムが供与されるように読めるが…。
しかし、最も大切な「ガチャアイテムの中のガチャレアアイテムの条件」が次のように曖昧に定義されており、ここで問題が起きている。

  1. 本ガイドラインの各種用語の定義
  2. ガチャレアアイテム
    有料ガチャにより提供されるガチャアイテムであって、同一の有料ガチャにより提供される他のガチャアイテムと比較 して、顕著な特徴を有するもの提供割合が低いものまたは提供数や期間が限定されたもの等、顧客を誘引 する目的で提供されるものをいう。

つまりガチャレアアイテムは、必ずしも個別のユーザーが欲しいと思っているアイテムを指してはいないのである。

パズドラ「アイテムのうち半分がレアアイテムです!」

「パズドラ」ガチャ対象266種類の半分近くを“当たり”扱いに ユーザーからは「ただの水増し」「何の意味もない自主規制」と怒りの声も - ねとらぼ

この記事によればガンホー側はガチャアイテム266種類のうちほぼ半数の132種類を「ガチャレアアイテム」と定義することでガイドラインの条件を満たしたと主張しているようだ。

※名前の左に◇が付いているアイテムがガチャレアアイテムとのこと。少なくともゴッドフェスの対象アイテムは全部レアアイテム!

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レアガチャラインナップ|パズル&ドラゴンズ

しかし当然ながら、「ガチャレアアイテム」が事業者に複数指定された場合においても個別のユーザーが欲しいガチャレアアイテムはそれぞれ異なる。事業者側は、ユーザーが求めているガチャレアアイテムとは異なるガチャレアアイテムを入手した場合、「ユーザーには目的のガチャレアアイテムを供与した」と主張できるのだろうか?

一回、この問題の原点に立ち返った方が良い。
ユーザーは自分が欲しいアイテムがあるからお金を払っている。
なぜ事業者はユーザーが求めるアイテムを満足に提供できないのだろうか?
ユーザーが欲しがるアイテムを提供しないことでソーシャルゲーム市場が数千億円とも言われる市場規模になっているならば、それはただの搾取だろう。

ガイドラインの「ガチャレアアイテム」の定義が不十分だという指摘は当然だが、それ以上に業界ガイドラインを定める時勢の中で事業者側がこのような杜撰な対応をするようでは、ユーザーが求める商品を適正価格で提供する意識がないと捉えられてもしかたがない。いくらガイドラインに抜け道があったとしても事業者側がガイドラインの目的からは遠く離れた対応を取るようでは、業界の自主規制ではなく行政側が監視を強めて法によって規制を行うように世論を強めていくしかないと思われる。

しかし消費者庁は…

記事から引用すれば、消費者庁消費者政策課長の鈴木一広氏はセミナーの冒頭で次のように話したようだ。

「オンラインゲームの健全な発展のためには、業界内でルールを作り、実効性を担保していただくことが重要。その意味では、こうしたセミナーが業界横断的に開催されるのは非常に有意義と考えています。セミナーをきっかけに、ルールにのっとった消費者向けの分かりやすい情報提供の向きが広がっていくことを期待しています」(鈴木氏)

繰り返しになるが、ソーシャルゲーム市場の一番の問題はユーザーが欲しいものを購入するのに上限なく金額を要求されている点であり、これは消費者向けの分かりやすい情報提供で解決できる問題ではないだろう。この辺り消費者庁の鈴木氏にはしっかりと理解して頂きたいものだ。

次回は、クラッシュロワイヤルを例にしてユーザーが求めるアイテム提供システムの正しいあり方でも書こうかな。