新建築住宅特集2014年8月号

新建築住宅特集2014年8月号が届いた。特集は「庭」。
このエントリは設計者のHPとamazonに登録されている著作へのリンクがメインです。同じ書籍へのリンクがあるのは偶然著者が同じだからです。
15作品のうち、一部をレビュー。図面や写真がないと伝わらないので、気になった人は雑誌を買うとよいと思います。
(写真はすべて新建築 Onlineより)

360°

設計:納谷新/納谷建築設計事務所
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納谷先生による自邸。外周の2階の高さにぐるりと芝生のバルコニー(?)がせり出していて、上部だけ見ると草原の中にたたずむ小さな家のよう。建築を学びたいと考えている若い人や、建築家に住宅を頼んでみたいと考えている人にはじっくりと眺めてもらいたい、現代日本住宅の特徴が表れた住宅。
・開放性(周囲との連続性)
まず、窓が確実に通常の住宅とは異なる。眺望がよい方向に対しては全面、かつキレイに窓を開ける。そして、建物と外部の境界をできるだけなくそうとしている。つまり道路と敷地の間に柵がない。また、バルコニーに手摺がない。

・断面構成
通常住宅の床の高さは「1階・2階」のように2つ程度になるが、この住宅では掘り込まれた1階の床やロフトなどによって、6つの床の高さに分けられている。

・仕上げ材
外部も内部も、芝生のバルコニーの上部・下部で意味を持たせるように仕上げを切り替えている。たくさん素材が使われているようで、意味に合わせて忠実に素材が選ばれている。
個人的には、1階に使われている渋谷製作所の「エクセルジョイント」が非常に気になった。このコンクリートのような表情により、木造でありながらも芝生のバルコニーの存在が強く表現されている。

・部材の取合い
柱と天井、床と壁、窓回り、写真で見る限りほぼ全ての部分で、通常建築家が余分だと考えている部材が省略されている。お手本のような非常にシャープな建築の表現。これには施工会社との信頼関係が感じられる(実際がどうなのかは知らないけど)。
窓回りの素材の使い方は、先ほどの仕上げ材の意味と共通しているので注目して欲しい。

辻堂の住宅

設計:北山恒+architecture WORKSHOP
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納谷先生の自邸が、現代日本住宅のひとつの表現として特徴付けられるのに対して、この北山先生による辻堂の住宅は100年前に表れた近代建築の表現として受け取れる。1枚の平らな床の上に非常に均質なグリッド(格子)を基準として自由に機能を配置している。それらの機能によって閉じた部分を構造のコアとし、周囲に対して開放的な住宅となっている。まさに近代建築。

御殿山の家

設計:堀部安嗣建築設計事務所
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北山先生の辻堂の住宅のような近代建築の表現が明瞭な幾何学で構成されるのに対し、堀部先生のこの住宅は、日本家屋独特の曖昧な雰囲気を特徴としている。まず建物が高さの異なる3つの屋根の組合せでできており、全体の形がひとつに定まらない。平面も諸室は独立しているが、それらの配置は少しずつ軸をずらしたり吹抜けで繋がるなど微妙に関係付けられている。室内は白とダークブラウンを基調にすることで、外部と連続するような開放感ではなく、外部の明るさと内部の暗さを対比させる日本的な室内の雰囲気を作り出している。

内庭・外庭の家

設計:横内敏人建築設計事務所


迷迭香(まんねんろう)

設計:川口通正建築研究所

Tの住宅

設計:とのま一級建築士事務所

時の流れる家

設計:菅原大輔/SUGAWARADAISUKE

ワークショップ

設計:川本敦史+川本まゆみ/エムエースタイル建築計画
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料理教室など地域に開放されたクリエイティブな使い方をクライアントが希望し、それに対し明快に、かつ建物的にもシンプルに応えた面白い作品。四角い箱を円弧で切り取り、寝室や浴室などの機能をその円弧の中に敷き詰めている。広大な敷地と合わさって、建物が近所の人々に利用されている姿が非常に魅力的に感じられると思われる。

栄町の光溜

設計:佐々木勝敏建築設計事務所

笹目町の家

設計:手嶋保建築事務所


鹿嶋の家

設計:田中秀弥/田建築研究所