僕らは都市を愛していた(神林長平)

デジタルデータのみを破壊する「情報震」が地球上で頻発している。原因はおろか震源地すら特定できない。あらゆる情報が崩壊し、機能を失った大都市からは人の影が消えた。偵察のためトウキョウに進駐した日本情報軍機動観測隊は、想定外の「敵」と出会う…終末か創世か、3.11を経てはじめて書き得た、渾身の長編登場。

SF小説家である神林長平氏の「僕らは都市を愛していた」読了。
個人的には物語の舞台設定が自分の好みであっただけに、物語の畳み方に物足りなさを感じたけど、それを差し引いても非常に刺激的な楽しい小説だった。

物語は、主人公である双子のそれぞれのストーリーを交互に読み進める形で進んでいく。
姉:綾田ミウは日本国情報軍の中尉として、原因不明の現象「情報震」の観測任務を遂行している。
弟:綾田カイムは公安警察官の職に着き、謎の通信技術である「体感通信」の実験台にされている。
姉と弟で異なったSF設定が導入されているが、読み進めていくとその技術が表と裏の関係であることに気づく。破壊されたユートピアと拡張する日常が交差する物語。

伊藤計劃氏の「ハーモニー」を読んだ後にも思ったことだが、SF小説の想像力は「建築」と乖離し「アーキテクチャ」と近づいている。そのことを考えるためにも、小説に出てきたコミュニケーションアーキテクチャについてまとめてみたら面白そうだ。というわけで「建築と現代小説」のカテゴリを設定してみた。そのうち書いてみよう。