「仙台建築都市学生会議による坂本一成氏へのインタビュー」

仙台建築都市学生会議による坂本一成氏へのインタビュー
2003年3月
東北で活動している学生グループである先代建築都市学生会議のホームページに坂本一成氏へのインタビューが掲載されています。6年前の記事ですが、氏の建築に対する姿勢が表れている良い記事だと思われるので紹介します。
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このインタビューでおもしろいのは、学生の建築家や設計に対する認識と坂本氏の間で大きくずれていることだと思います。では、どうずれているのか。一部を引用しながら見てみます。(実際のインタビュー文書とは流れが異なります)

学生:坂本先生というと、建築の「概念」や「空間の分節や構成」ということを話されることが多いのですが、そのきっかけ、そういう「考え方」を見つけた時のことをお聞かせください。 
坂本: 最初はイメージです。自分で作りたい空間です。それから、「あれはよくないのではないか」とか、相対化(クリティーク)するような考え方も出る。学生達も自分に機会があればこういうものをやってみたいという思いはあるはずです。初めて作ろうとしたときにそれらをすべて実現したいと思って大体みんな欲張るわけです。だけど規模などが限定され、その中で一番効率のいい作り方を考えるでしょう。 ・・・

学生:自分の考え方、概念(イメージ)をいかに一般化(伝達)するかということについてはどういうふうにお考えでしょうか。 
坂本:一般化しようなんて思っていないですよ。少なくとも僕自身は考えていない。重要なのは僕の認識の問題って言ったらいいのかな。・・・

僕の実感として、たいはんの学生というのはそこにいけば建築家になれるものだと思って大学に入り、実務経験は後からでも覚えられるという気持ちで設計製図の授業を受けています。だから上のインタビューで見られるように、「考え方を見つける」とか「概念を一般化」という言葉が出てきますし、逆に見れば、製図の授業で求められていることはそこだと感じているわけです。実際、講評会で講師の方に言われることの大半は、現実の経済や合理性の話ではなく、設計理念を問われることがほとんどだと思います。


しかしその結果として、学生からこのような質問が飛び出すのだと思います。

(事務所で働かずに最初から自分で設計したということに対して)
学生会議:図面の引き方というのはどうやって覚えたのですか。
坂本:あの、皆さん図面引きませんか?
学生会議:実際に作るとなるとまた別の話になると思うのですが。 

授業で設計することと、実際に設計するときに違う図面が必要になることは確かですが、これはかなり衝撃的な質問です。


自分もこれから実際に建たないプロジェクトの設計をすることがありますが、実際の仕事との距離を常にはかりながら取り組んでいきたいと思います。


坂本一成/住宅坂本一成 住宅-日常の詩学建築を思考するディメンション―坂本一成との対話新建築 2008年 07月号 [雑誌]日本の現代住宅〈1985‐2005〉