西沢大良によるクラインダイサム展の展覧会レポート」
 http://www.toto.co.jp/gallerma/ex090116/exhbt_rpt.htm
 ギャラリー・間で開催されているクラインダイサムの展覧会は6月6日までです。西沢大良氏による自分にとってたいへん興味深い内容のレポートがギャラリー・間のホームページにあがっていました。このレポートはクラインダイサムについてに留まらず、現在の建築・建築家を取り巻く状況の一端を示す内容になっていると思います。
FULクラインダイサムアーキテクツ工事中景 ケンセツゲンバのデザイン西沢大良 1994‐2004現代住宅研究 (10+1 Series)建築家は住宅で何を考えているのか (PHP新書 545)

以下、自分による展覧会のレポート
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 先日、ギャラリー・間で行われているクライン=ダイサムの展覧会に行きました。展覧会場は3階と4階で展示が異なっており、3階は街の飲み屋の前にあるような電飾の付いた看板にクラインダイサムの作品の写真がはめ込まれたものと、壁に貼られた建物の外観写真が、中庭まで含めてところ狭しと並べられています。4階は水晶の中にそれぞれの建物が彫り込まれたものが、真っ暗な部屋の中に下からライトアップされており、あたかも高級ジュエリー店のようなインテリアの展示となっています。
 建築家による本人の展示は、異なる条件の作品郡を建築家の一連の思考のまとまりとして表現できる場になると思いますが、ここでは全ての作品が同一のフォーマットによってまとめられています。つまりこのまとめ方、それ自体がクラインダイサムの方法論として捉えられます。
 西沢氏が書いているように、そのクラインダイサムの方法論は既知なものの組合せを変えることによって生まれる未知なものの創出だといえます。これはデザインにおいては何も彼らだけの手法ではなく、プロダクトデザインに目を向ければそのようなものはたくさん見ることができます。なぜ、既知なものの組合せを変えるとおもしろくなるのか、それは人びとが無意識に受け取っている意味が、組合せが変わることで顕在化され意識されるからです。この方法は、20世紀初頭にマルセル=デュシャンが芸術の文化で提示した「泉」という名前の作品に見ることができます。
 今回の展示においても、彼らは匠に意味を操作しています。特に4階においてはそれが顕著に表れており、見終わったあとに残る印象は各作品より展示空間の印象的な光景で、そのことがクラインダイサムだけでなく、ギャラリー・間の価値にまで影響を与えるようなものになっていると思われます。