「都市の言葉」-人間の存在の都市デザイン-
 この時代の都市を創造しようとする建築家の流れの中における、槇氏の態度を表明した論文だと思われる。彼はこの論文の中で4つの概念的な計画を提案と共に、未来的都市のあり方を思想の面から補完しながら語っている。論文と提案された計画の説明が独立した文章になっているのが興味深い。
 この文章に限らず他の槇氏の文章からもわかることであるが、彼は「人間的(Humane)」という概念を尊重している。例えば彼は歩道について「なぜ歩道の巾が車道に沿って一定巾で並行にあらねばならないか」と記している。これは多少大げさにいいかえれば、大規模な都市を計画する視点においても、その形態の抽出される論理は人間的な側面から得られる、と考えることができる。
 この点において、槇氏は当時のメタボリグループの建築家とは大きく異なり、後に続く代官山ヒルサイドテラスが今日も評価される良い建築になったゆえんだと思われる。
見えがくれする都市―江戸から東京へ (SD選書)

ヒルサイドテラス/ウエストの世界

ヒルサイドテラス/ウエストの世界